状況作品（フィルター未使用作品）を見て分かった事なのですが、この作品はレタッチテクノとレタッチウｪーブを使用したと応募票に記してありました。
日の入り前の陽光をこの様に変化させたテクニックは見事です。この陽光の変化の描写はFTC発足以来、初の表現であると同時に、フィルターによってこの様に操れる事は私自身も、とても興味をもちました。

陽光の操り方は、画面水平、斜めに入れる事が基本ですが（その様に私も指導をしてきましたが）、この作品は円形的に巴形（ともえがた）の光を操り、主題に対して効果的な配置に入れています。この操り方は撮影位置、撮影アングル、光の強弱等の条件が合わなければ、この様な描写にはならないと思います。

作者は偶然にもこの様な描写になったと語っていましたが、偶然的であってもフィルターの操作を誤った使い方をしていては、決してこの様な描写にはならないはずです。

特に光を操るテクノフィルターは微妙な角度調節を要求します。その使い方は、誰でもが使いこなせるとは限りません。

また、レタッチテクノ＋レタッチウェーブの複数の組合せた基本的な使い方をしっかりと習得した表れだと思います。

何れにしても光を操るフィルターテクニックは見事でした。それと同時に状況作品も的確に作品にしていました。

この作品は状況作品（フィルター未使用作品）だけでは分からないですが、フィルターを使った展開作品(フィルター使用作品)を見ると作者の表現意図が良く分かります。氏によりますと、近隣の公園にある金属オブジェに映るシルエットを写したものと語っていましたが、この様な視点を持つ感性に素晴らしさを感じます。

フィルターワークの基本は状況を見て、その状況から主題を決め、イメージを描くことが作品におけるフィルターの使い方です。

作者はモチーフを発見し、その主題に対して各種のフィルターを使用して、フィルター効果を優先して作品にしたと思える節がありました。

そして、その過程において出来上がった作品はご覧の通りですが、この様な見事な表現は今日までにあったでしょうか。シートフィルターだけで、流動感をも感じさせる作風に驚きました。

素晴らしい作品ですが、この作品がFTC写真大賞作品に得られなかった理由があります。状況作品の撮影データを見ますと、展開作品との撮影日が異なっていました。後日状況作品のみを撮影したものでした。

本来、フィルターを使用する前に、主題に対してその主題をどの様に表現するかを考えるのが、フィルターの使い方です。

しかし、この作品は先に展開作品を撮影しているので、この過程が不足していました。つまりフィルター効果は把握しているものの、どのような作品になるかは作者はイメージ出来ていなかったようでした。

一方、大賞作品はこの過程を確実にものにしていました。

今回のコンテストは状況作品から、イメージ展開をキーポイントに挙げています。

しかし、この作品の表現を選外作品にする事は、とても寂しく（悲しい思いに掻き立てられる程であり）、シートフィルターの効果を余す事なく発揮させている撮影技術は素晴らしいです。

作品としては、正に画題通り「火の鳥」を思わせる描写で、作品からは、静から動を感じさせ、飛翔をも思わせるフィルターテクニックでした。シートフィルターを効果的に使った成果は見事でした。

文雪の日の石仏を作品にしていますが、画面がやや広い感じがします。

風景的な画面構成ですが、この画面づくりは基本的過ぎるな画面構成ですので、更に主題をより強調する画面構成をすると、作者の表現意図が第3者に伝わる作品になり、より以上の作品が望まれるでしょう。

作品にウェーブ系のフィルターが入っているのでしょうか、画面に柔らかなウェーブ描写が出ていて素晴らしい柔らかな作品になっています。日本画的な雰囲気を感じさせる作品です。

手塚まんがのシーンを思わせる作品ですが、この場合はウェーブフィルターを使うより、フォグフィルター、またはフォグフォーカスフィルターでまとめるとより宇宙基地を演出出来たのではないでしょうか。

再度挑戦して頂きたい。

クルーズの入港客船を作品にしたものです。客船をイメージ風にまとめた事は良いと思いますが、港の広さが出ていません。

この場合、客船の入港を風景的にまとめた方がベストでしょう。画面上部、または客船左右の空間表現を考える必要があります。